ホーム>>国家総合職試験>>過去問解答>>遺伝学解答

国家総合職試験過去問解答

国家総合職二次試験の記述試験は解答が公開されていないので、2012年の(化学・生物・薬学)区分の試験の解答例を紹介しています。

【No. 18】遺伝学(管理人作成)


I.遺伝地図の作成

(1)連鎖と連鎖計算

(a)、[A, B][A, b][a, B][a, b]それぞれの表現型を示す個体を数えると、
[A, B]:[A, b]:[a, B]:[a, b] = 522:21:20:527
であり、[A, B]+[a, b]:[A, b]+[a, B] ≠ 1:1 なので遺伝子座AとBは同一の染色体上に連鎖している。

(b)、[D, E][D, e][d, E][d, e]それぞれの表現型を示す個体を数えると、
[D, E]+[d, e]:[D, e]+[d, E] = 872:218
であるので組換え価は、218/1090 x 100 = 20 [%]

(c)、(a)(b)と同様に各遺伝子座間の組換え価を計算すると、
[A-B間] = 3.8%
[A-D間] = 13%
[A-E間] = 29%
[B-D間] = 9.3%
[B-E間] = 27%
[D-E間] = 20%
となるので、各遺伝子座(A, B, D, E)を並べ替えると、(A, B, D, E)が実際の染色体上で並ぶ順番である。

(d)、例えば、[A-D間]+[D-E間] = 13+20 = 33%であるが、[A-E間]の組換え価の観測値は29%なので理論値よりも小さい値である。

これは、対合した染色体のA-D間とD-E間の両方で交叉が起こる二重交叉が起こった場合、[A-D間]と[D-E間]では組換えが観測されるが、 [A-E間]では組換えが観測されなくなる現象によるものであると考えられる。

(e)、交配実験において観察される干渉とは、ある染色体において一度交叉が起こった場合、同じ染色体上では二度目以降の交叉が起こりにくくなるという現象である。
表中においては、[A-D間][D-E間][A-E間]の組換え価を参照すると、それぞれ13%、20%、29%である。
[A-E間]での理論上の組換え価は、干渉がないと仮定すると、
0.13 x 0.80 + 0.87 x 0.20 = 0.278である。
しかし、実際には[A-E間]の組換え価は0.29と観察されており、干渉が起こっているといえる。

(2)遺伝地図作成
(a)、組換え価の最大値は50%である。
一般的に組換えは染色体間の乗り換えにより生じるが、染色体間の乗り換えは2染色体間でしか起こらないため、組換え価の最大値は50%となる。

(b)、染色体末端(テロメア)や動原体周辺(セントロメア)では乗り換えが起こりにくいため、物理的地図と遺伝学的に作成された地図の間で、地図距離が異なる場合がある。

II. 遺伝子組み換え技術に関する記述問題

(1)、従来の遺伝学では、ある形質を示す変異体を用いて変異を示す原因遺伝子を特定するという手法で解析が行われるが、 「逆遺伝学」と呼ばれるものは特定の機能未知の遺伝子を破壊し、変異体の形質を調べるという従来の遺伝学とは全く逆の手順を追った手法で解析が行われる。

(2)、従来の育種法は、継代の過程で偶然生じた有用な形質を持つ個体を選抜するという方法を取る。 そのため、有用な変異体が生じることが偶然に左右され、長期に渡る継代が必要となる。一方、遺伝子組み換え技術を用いた育種方法は、 収量の増加につながるような機能既知の遺伝子を組換えに用いることにより、従来の方法よりも効率の良い育種が可能となる。

(3)、タンパク質の大量生産には、細菌やウイルスベクターなどが用いられることが多いが、ヒトへの投与が予定される医薬品などの生産においては、 細菌やウイルスが医薬品に混入する可能性があり、安全性について議論が必要となる。また、ベクターとして用いられる細菌やウイルスはヒトを宿主としないもの が選択されるが、それでもなお消費者や一般人の立場からは完全に安心できるものとは言えないだろう。

(4)、特定の遺伝子座に挿入する方法:相同組換えと呼ばれる手法がある。 相同組換えとは、挿入したい遺伝子座と相同な配列を目的の遺伝子を挟むように持つベクターを作成し、偶発的に起こる遺伝子の乗り換えを利用して行う遺伝子挿入手法である。
遺伝子座を特定しない挿入方法:トランスポゾンを用いた手法がある。 代表的なものはpiggy bacベースのベクターを用いたもので、トランスポゾンが持つトランスポゼースを利用して、ランダムにゲノムに挿入することが出来る。

(5)、現象の名前ってなんでしょう。。。
原因としては、導入された遺伝子近傍にあるプロモーターや、遺伝子発現調節領域の存在により、挿入された遺伝子座の発現様式に従って目的遺伝子が発現されるためである。

その他